なぜ日本には50歳の女性と30歳の男性のカップルが多いのでしょうか?

世間知らずだけど、真面目でかわいい

「ご無沙汰してます!」

お店のドアが開くと同時に、マスクをしていても満面の笑みと分かるくらいのビッグスマイルで登場した真美子さん(48歳、仮名・以下同)。この日はご自身の48歳のお誕生日プレゼントにと筆者が経営するアーユルヴェーダのサロンへ来て下さった。肌の様子を見ても、なんだかとても調子がよさそうだ。

「真美子さん、ひょっとして最近、よく会っている男性がいるのではないですか?」と半分冗談半分本気で投げかけてみると、真美子さんは両手で自分の胸に手を当ててにこやかに目を逸らした。

真美子さんは3ヵ月前に彼氏ができたばかりと言う。お相手の年齢を聞くと、目をギュッとつむってこう答えた。

「24歳なの! お母さんが私と同い年で……」

私は思わず声を上げて驚いてしまった。

真美子さんは短大卒業後は大手広告会社で勤務をしていたが26代で寿退社。しかし、度重なる夫の浮気、風俗通いにうんざりして、35歳で離婚した。子供はいない。離婚を機に職安の職業訓練で医療秘書の資格をとり、現在では埼玉県内の医療機関に勤めている。

45歳を過ぎる頃から少しずつ体重が増加してきていることを気にしていた真美子さんは、半年前にランニングをスタート。運動経験がないので怪我をせず効率よく動けるようにとプライベートコーチについてもらったのだが、そのコーチと恋に落ちた。はじめは「若くてかわいい先生だな。ちょっと世間知らずだけど真面目な人」という印象で、いきなり恋愛モードで見ていたわけではなかったという。

しかし、練習が終わってから一緒にランチやお茶をして帰ることが増えて、話しているうちに「あれ?」と思うようになったのだそうだ。

親子ほど年も離れているし、慣れない運動でいよいよ自分の脳がバグり始めたのかと思ったそうだが、彼の笑顔に癒される自分には嘘が付けなかったという。真美子さん自身は、交際を申し込むつもりはなく、韓国アイドルを応援するような「推し活」の一環ととらえていたのだが、レッスンスタートから3ヵ月が経った頃に、彼のほうから交際の申し出があったそうだ。

年下の上司に優しくされて

10年ほど前までは、10歳年下の旦那様や6歳年下の彼氏と聞いただけで、「うっそー!」となっていたが、このところ40歳以降、更にはアラフィフ女性の年下彼氏はまるで珍しくない。

実際、筆者の周りにも、54歳バツ1で子どもが32歳、彼氏が34歳という人もいれば、20歳年下の28歳の男性と再婚したことをSNSで発表し、祝福コメントの嵐を受けている人もいる。

そんな「年の差」の恋を楽しんでいる女性をもう一人、紹介しよう。

加奈さん(52歳)は外資企業に勤めるキャリアウーマンだったが、職場結婚をし、出産をきっかけに、夫から「家にいて欲しい」と言われ専業主婦に転身。その後、子どもが小学校高学年になる頃から、週に3日だけパートタイムで経理の仕事を行っていた。

港区の一等地にある高級マンションで誰もが羨む順風満帆の生活と思いきや、夫とは息子を出産してから“疎遠”になっている上に、専業主婦時代に、「俺が食わせてやってんだからお前は家政婦をしていればいい」という夫からのモラハラ発言でとっくに気持ちが冷めてしまっていた。

そして昨年、息子の大学入学が決まったと同時に、いよいよ離婚に踏み切った。一人で中野区の小さなアパートに引っ越し、生活を立て直すため正社員募集している都内の中小企業へ転職。そこで運命の出会いが待っていた。18歳年下の上司の康介さん(34歳)だ。

約20年ぶりのフルタイムの仕事は心身にこたえる。周りをみれば同世代の女性はバリバリと仕事をこなし、若い頃のように仕事の覚えがなかなかうまくいかない加奈さんにきつく当たってくる。この先やっていけるのかと日々不安と悔しさで、家に帰れば自然と涙が溢れていた。そんな様子を察してか、ある日、康介さんから飲みに行きましょうと誘われた。

「加奈さん毎日頑張ってますよね。年下の僕が言うのもなんですが、はじめから上手く行くことなんてないので、一緒に頑張りましょう!」

孤独を感じていた加奈さんにとって、「一緒頑張りましょう」という一言にとても癒しを感じ、“お兄さん”に見えたと言う。

その後、康介さんからの慰めの言葉がモチベーションになり、必死で仕事をこなしていった。月に1度飲みに行っていたのが月に2度になり、メッセージのやりとりも増えていった。

「今週飲みに行きましょうって言われたんだけど、日にちを決めてなかったので、いつ連絡がくるのかとスマホを握りしめて待っている自分がいるんです。年甲斐もないですが、正直苦しくて……」

「ギャップ」に魅かれる30代男性

年上と付き合う男性の話も聞いてみよう。最近6年ぶりに彼女ができたという池袋在住の准さん(仮名33歳)。准さんは自宅近くの飲食店に勤務し、毎日夜遅くまで働いている。趣味はダンスというだけあって広背筋と胸筋がほどよく鍛えられ、手足も長く、洋服越しにでもスタイルの良さが分かる。

いかにもモテそうな准さんだが、めっぽう女性の扱いは苦手で、自分から声をかけるということはないそうだ。そんな准さんの6年ぶりの彼女は14歳年上だという。

「年上の女性に対するあこがれは昔からありました。でも、これまで交際してきた女性は年下ばかりでした。一度、8歳年上の女性と付き合ったことがありますが、結婚や妊娠が差し迫った感じというか、相手があまりに前のめりだったので別れてしまいました。自分で言うのもなんですが、僕は“ゆとり草食世代”。結婚だ子どもだと追い詰められるのが苦手なんです」

人見知りの“草食”だという准さんだが、今の相手に交際の申し出をしたのは自身だという。交際の申し出に踏み込むまでには、キャリアウーマンの彼女と自分なんかが釣り合うのかと随分葛藤はあったそうだ。

彼女はあまりの突然の出来事に驚いでフリーズしていたそうだが、すぐにOKをしてくれた。交際がスタートしてからは週に1度のペースで一緒に映画館に行ったり、博物館へ行ったり、いわゆる普通のデートを楽しんでいるという。

准さんがつき合っているバブル世代の女性と言えば、寿退社かキャリアかの二択を迫られた世代だ。特にキャリアの道を選んで突き進んできた人は、経済的には余裕があっても、男社会で突っ走ってきただけに、精神的疲労と甘えられる場所がないという心の隙間があるケースが多い。これには筆者も共感するところがある。

一方、迫られることが苦手だというゆとり男子にとっては、経済的にも生活的にも依存されることのないキャリア女性に居心地の良さを感じるようだ。

「力強く生きている彼女を見ていると、のほほんともしていられないなって刺激をもらいますね。仕事をしている姿を見ていると、かっこいいな、綺麗だなって感じますし、かと思えば、仕事から離れると年齢も社会的地位も関係なく“ただの甘えん坊の女の子”みたいで可愛いんです。そのギャップにまた癒されるんです」

皆さんのお話を伺っていると、年下彼氏のいる女性たちは共通して自分の意思を強く持った生き方をしているゆえに癒しを求めている印象だ。また、その彼氏たちも彼女たちの包容力に癒されている。

また、内面性だけでなく彼女たちの共通点はいくつかある。清潔感のある身だしなみに、ナチュラルメイク、体型や健康面にも余念がなくヨガやランニング、食事の管理もきちんとしている。ひと昔前に比べて、40歳以降の女性の美容に対する意識が高くなり、見た目年齢が若年化してきているということも「年の差」という壁をなくしている一つの要因になっているのは違いない。

若い女性が、経済力や包容力のある男性に魅かれるのは昔からある話だ。同じ理由で、今どきの男性は年上の女性に惹かれるのかもしれない。ジェンダー格差の縮小が招いた当然の結果だろう。

いずれにしても、「世間体」などという見えない壁は崩壊しつつある。

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