甘く切ない日本ドラマのヒット作! 「うるさいの一行一行が、大きな良い……」本当に良い泣き所です。

川口春奈主演の木曜劇場「silent」(毎週木曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)が、10月6日放送の初回から好評だ。放送時にはツイーターのトレンドランキングが国内外で1位となり、見逃し配信は公開後2日で160万回再生を突破し、フジテレビ史上最速の記録を叩き出している。病気で耳が聴こえなくなった目黒蓮(Snow Man)演じる想の手話演技も話題だが、『フジテレビヤングシナリオ大賞』受賞作家である生方美久が紡ぎ出すセリフにも注目したい。

■“シナリオ大賞”受賞作家のオリジナル作品

今作は原作のない、生方美久による完全オリジナル作品。主人公・青羽紬(川口)が、本気で愛するも別れることになってしまった高校時代の恋人・佐倉想(目黒)と8年の時を経て偶然、再会。そこに待ち受けていた現実と向き合いながらも寄り添い、乗り越えていこうとする姿を描く。

大切な人との別れを乗り越え、今を生きようとしている女性と、障がいを患ってしまったことで自分と向き合えず別れを選んでしまった青年。音のない世界でもう一度“出会い直す”ことになった二人と、それを取り巻く人々が織り成す、切なくも温かいラブストーリーだ。

■過ぎて初めて気付く幸せがある

人は、失って初めて、たくさんの幸せに包まれていたということに気付くときがある。

「silent」第1話では、高校時代に付き合っていた紬と想の再会が描かれた。卒業して突然、一方的に別れを告げて去ったと思っていた彼氏は、実は耳の病気を患い、音の聴こえない世界で生きていたということを知るところから物語が始まる。

紬は、今やっと、想が8年間一人で苦しんでいたことをようやく知ったところだ。ここから空白の時間が描かれるだろうし、再会した2人と周囲が、この先どんな形で関係し合って歩んでいくのか。新しいストーリーはまだ始まったばかりだ。

■「学校はいやでも週5で好きな人に会える場所」

紬が高校時代を思い出したときのセリフで「今思うと学校っていうのはすごい場所だった。いやでも週5で行く場所で、いやでも週5で好きな人に会える場所だった」というのがあった。これは、第1話の中で一番の名ゼリフだったのではないかと、勝手ながら耳に入った瞬間ハッとさせられた。

校内に恋愛相手がいる、またはいた人にとって、学校というのはとんでもなく恵まれた環境であったのだ。しかし、相手と顔を合わすのが気まずい日もあるだろうし、100%幸せだと噛みしめて学生生活を送った子は少ないだろう。これこそ失って初めて気付く幸せ、というやつである。

例えば「週5で好きな人に会えるなんて、最高に楽しくスキップで通ってしまうような場所だった!」などといった喜び全開の言葉選びではないところも良かった。「いやでも行く場所」「いやでも好きな人に会える場所」という学生ならではの気ダルそうな言い回しや、“学校って別に最高なところでもないけど、今思えばすごい場所だな”という実感は、卒業して8年経った紬のリアルな気持ちが込められた秀逸なセリフであった。

■知らない世界を「知る」きっかけに

紬が想の第一印象を「好きな声で好きな言葉を紡ぐ人だった」と語ったり、現恋人の湊斗(鈴鹿央士)の性格を「主成分:優しさ」と表したりするのは、紬の感性と表現力が優れていることを示している。

健常者と障がい者、または大多数と少数と言ってもいいが、いわゆる普通の女子の世界に住む紬が、耳が聴こえなくなった想のことをどう捉えていくのかが楽しみな作品だ。何かを失う前に気付くことができれば、人はもっと他人に優しくなれるはずだし、自分とは違う考えや境遇に理解を深めることができるはず。ドラマの役目というのは「知らない世界を知る」という側面もあるだろう。多くの人が何かを感じ取っていけそうな作品だ。

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