和製英語病 “英語ができない”

日本でTOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)の調査によると、ビジネスパーソンの約7割(69.0%)が英語を苦手と感じているという結果が出ています。TOEFLの結果からみても、日本人の英語力は世界的にも低く、アジアの中でも特に低いと言えます。なぜ日本人は英語が苦手なのでしょうか?それは、英語に苦手意識を持つ人がそれぞれに、英語学習におけるつまずきとなる「英語病」を抱えているからです。

『英語の学習つまずき 50の処方箋』では、これまで1万人以上の英語学習者を診てきたイングリッシュ・ドクターが、あなたの英語上達を妨げている「英語病」に対処する方法を教えます。本稿では同書より一部を抜粋のうえ、「英会話」においてつまずきやすい点について解説します。

■英語病 アイキャント症候群

■概要 「英語は話せない」「全然できない」などと言い、自分が持っている英語力を否定してしまう英語病■

■典型的な症状

□英語は「できない」「知らない」「話せない」などとつい思ってしまう

□「ボキャブラリーが少ないから」と、単語やフレーズを頑張って覚えている

□英語を自分で使おうとはせず、せっかくの機会があっても避けてしまう

□高レベルの資格やハイスコアを取っているのに英語力に自信がもてない

■改善POINT

目標や理想に届かない自分を「できない」と捉えるのではなく、既に「できる」ことをしっかりと肯定し、その力を発揮すべきです。

日本人には「私は英語が話せない」と思っている人が大勢います。「アイキャント症候群」を治すためには、「英語ができる/できない」という意味をもう少し深く考える必要があります。

なぜなら、英検で3級程度しか持っていなくても英語が話せる人もいれば、反対にTOEIC試験で900点を超すようなハイスコアを持っているのに全然話せないという人もいるからです。

■英語が話せないと思っている人は…

ここでぜひ「客観的な指標」と「主観的な評価」の2つに分けてみることをオススメします。TOEICスコアや英検の級数などは、客観的な指標だと言えます。しかし本当に大切なのは、「私は英語ができる/話せる」などと自分自身で思えるかどうかであり、それは極めて主観的な評価なのです。

「英語が話せない」と思っている人は、英語を話す機会があっても避けてしまうでしょう。その結果、経験値を積むことができず、上達が得られづらくなります。逆に、英語を話すことに対して心理的な抵抗感がない人は、生活の中でどんどん英語を使うことにより、着実に経験値を積み、会話力をアップさせられます。

つまり、問題の本質にあるのは、主観的な評価として「できる」と思うのか、それとも「できない」と思ってしまうのか─という違いです。

客観的にどう評価されようが、他人がなんと言おうが、最終的には自分で自分の英語力を認められるかどうかという主観が全てを決めるのです。特に「できない/知らない/話せない」などと否定的に思ってしまうと、上達の足枷になってしまいます。

でもここで、「自分は英語ができる/話せるとは、まったくもって思えない」という反論が聞こえてきそうです。確かに、カタコトレベルで単語しか出てこなかったり、すぐに言葉に詰まってしまったりするようであれば、「英語が話せる」とはお世辞にも言えないと感じるかもしれません。

そこでご覧いただきたいのが、上図です。「英語が話せる/話せない」と一口に言いますが、実際には8段階くらいで捉えるべきだというのがイングリッシュ・ドクターとしての私の見解です。

(※⑦と⑧は便宜的にこの順番に並べましたが、実際はどちらが上ということはありません)

これに当てはめると、中学校で英語教育を受けている日本人は全員、2段階をクリアしているでしょう。3段階目ができるかどうかは、度胸の問題に過ぎません。また、4段階目に関してもできる人が少なくないはずです。

私が全ての英語学習者の方にお伝えしたいのは、日本人は誰でも英語でコミュニケーションを取れる素地を既に持っている─ということ。スムーズな英会話は厳しいとしても、初歩的なやり取りであれば誰でも行えるのです。

他の外国語を考えてみてください。中国語でもフランス語でも、ベトナム語/ロシア語/スワヒリ語でもなんでも構いません。2段階目をクリアできる外国語がどれだけあるでしょうか?

おそらく「英語以外にはない」という人が大部分でしょう。英語でなら2~4段階目のレベルで表現ができるスキルがあるという事実、そしてそのスキルの価値は絶対に否定すべきではありません。

ぜひ「自分は英語を話せない」などと勝手に否定せず、できることは「できる」と肯定してください。そして、実際に英語を使うことにもどんどん挑戦していきましょう。そうすることで、英語力を上達させる上で極めて重要な「経験値」をたくさん積めるようになりますよ。

■英語が話せないと思っている人が実践すべきこと

【処方箋】

「英語がまったく話せない」と思ってしまう人は、知っている英単語や言える英語表現を書き出してみてください。そして、それだけたくさんの知識が既にあるという事実を味わいましょう。

[ 参考書籍 ]

●『言ってることなんかわからなくても、英語は話せる!』

(サンマーク出版)恩藤孝次著

TOEICスコアが315点という著者が、ビジネス現場でネイティブスピーカーを相手に仕事をする心構えやテクニック(FIGHTING ENGLISH)を教えてくれる本。

●『「カタカナ英語」ではじめよう!』

(角川フォレスタ)晴山陽一著

日本語に含まれているカタカナ英語を、そのまま使えるもの、発音が通じにくいもの、意味が通じにくいものの3種類に分けることで、うまく活用することを勧める本。なお、音声は付属していません。

英語病 もたつきスピーキング

■概要

英単語やフレーズなどがなかなか思い出せず、英語でコミュニケーションがうまく取れない

■典型的な症状

□英単語やフレーズがパッと思い出せない

□言いたい英単語が出てこず、「えーと」と考え込んでしまう

□簡単なフレーズが思い出せないことがよくある

■改善POINT

単語カード(フラッシュカード)を使って練習することで、単語がパッと口から出てくる「瞬発力」を鍛えてください。

■“治療”のための解説

英語の初級者や、長年のブランクがある人に多いのが、言いたい英単語が思い出せないという症状です。そこで「えーと……」と考え込んでしまって発言ができず、ほとんど会話ができないという結果になりがちです。

「もたつきスピーキング病」の原因は、アウトプット不足の一言に尽きます。単語やフレーズをただ覚えるだけでなく、それがパッと口から出てくるように「瞬発力」を鍛えることが重要です。

そのためのツールとしては「単語カード(フラッシュカード)」がとてもオススメです。例えば表面には日本語(訳)を1つ、裏面には対応する英語表現(単語やフレーズ)を書きます。

そして、日本語を見て英語を言うというアウトプット練習をする際に制限時間を設けるのです。最初は2~3秒くらいに設定して、答えられない場合にはすぐに答えを見てしまってください。

パッと言えるようになってきたら、制限時間を1秒に縮めます。そして、1秒以内に口から英語が出始めるように「瞬発力」を鍛えることがオススメです。

瞬発力をつける対象は、単語やイディオム(例:get off the bus(バスから降りる))、数語から成るフレーズ(例:That’s a good idea.(それはいい考えです))など、1~数語程度の長さの言葉に留めておきましょう。長い英文を単語カードで練習しようとすると、丸暗記になってしまう危険性がありますのでご注意ください。

【処方箋】

まずは文房具屋や100 円ショップなどに行って、単語カードを買ってきてください。そして、瞬発力を鍛えるアウトプット練習を行いましょう。

[ 参考書籍 ]

●『英語2語トレ』(SBクリエイティブ)重森ちぐさ著

「動詞+名詞(目的語)」という2語の組み合わせから始め、そこに主語を増やして3語、修飾語句を加えて4語……という風に、子どもの言語獲得と似たようなプロセスで英文を作るトレーニングを行える書籍。時制などの難しくなりがちな文法を後回しにするアプローチが秀逸です。

まずは2語のフレーズをパッと言えるように瞬発力をつけるところから始めてみてください。また、3語、4語…と長くしていくところは「もやしボディ症」の解消に役立ちます。

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